研修所第一期生入所式
研修所長式辞
昭和五十九年七月二十六日(木)


   研修生のみなさん、入所おめでとうございます。

 新制度の研修生一期生として52めいを迎えましたが1人病気のため51めいのみなさんが入所しました。

 本日は大原副社長をはじめとする会社の幹部の方々、越智中央執行委員長並びに組合の方々が本当にご多忙中にもかかはりませず、入所式にご参列いただきました。このことはひとえに研修生の成長ぶりと今後えの期待の気持の表われと私は思っています。

 ここで研修所生活をふりかえってみますと、昨年12月入所式にあたり、副社長より<研修生は研修によって前向きの自己変革に努力し、厳しい環境の中で会社の飛躍に貢献する人材として育っていただきたい。仕事をしながらの研修で大変なことだと思いますが全力を投入して人生の画期的な節目にしていただきたい>との訓辞がありました。

 私は自学自得の心構えで研修することを申しました。研修所では一匹の鯛を与えることよりはその鯛の釣り方を身につけてもらいたいと考えました。

 通信教育を主体として巡回指導、スクーリングの組み合わせ。研修生をバックアップするためのマン・ツ・マン方式のアドバイザー制度の導入により研修生~職場~研修所の三位一体のシステム。生販技一体の会社組織を前提とする技術、事務科の同時研修方法で出発しました。8ヶ月にわたるみなさんの研修ぶりに私は多くのことを教えられました。

 副社長のご期待にこたえるためみなさんは研修生であることを自覚し、研修生らしい行動につとめ、時間、修得中の知識、日誌の活用工夫。学んだことを職場で実際に実行することにより自分の能力向上をはかり、相互研鑽により励ましあってきました。

 また、みなさんの体験談から仕事しながらの通信教育のよい点を知らされました。研修生全員仕事と勉学の両立に大変苦労しました。一期生のうち80数%の人は妻帯者で家庭との調和が加わりました。

 しかしながら、お母さんからは<文章がうまくなったね>

 奥さんからは<顔がひきしまって男らしくなった>

 子供さんからは<お父さんはよくべんきょうするね>、また<お父さんはどうしてべんきょうするのか>とかわいらしくせめられた。

 などと、皆さんの話の中にありました。

 私はふ明にして、こんなことは当初予測することはできませんでした。一期生は三位一体ではなく、家族を含めた四位一体であり、かんづめ教育ではこんなことにはならないのではないでしょうか。家庭での夫であり、お父さんの勉強する姿は家族のみなさんに何かを与え、家族の信頼感、子供さんの本当の教育に役立つものと受けとりました。

 ややもすれば、くじけようとする通信教育にあって研修生自身かけがえのない体験をされたものと思います。

 次に研修期間中に心にのこるものは何かとたずねたところ、<多くの友達ができたこと>だと答える人が最も多く、これに関連して<自分だけが苦労して勉強しているのではない。同僚も同じだ>、<立派な同僚がいる>、<技術あるいは事務系の人の仕事を知り理解できるようになった>との声でした。

 お互いが知り合い、同僚の良いところを学び、理解しあうことができ、友情を固めたことはきっと<人生の節目>であったということが深まってくることを確信いたします。

 これから修業後のみなさんにはフォロアップ教育が待っています。心構えは立派になりました。管理技術の基礎作りができました。今後6ヶ月間、上司の指導のもとに研修で修得した知識、考え方、行動力を積極的に業務の上に活用するととともに自己啓発に努める教育が実施されます。能力開発レポートによる計画的な自己研鑽。また、それぞれの職場に密着した<テーマ研究>による修得技術の応用。定期的会合を通して研修生相互研鑽など継続的な向上を期待しています。

 はなむけの言葉として、研修生の短期間での成長ぶりから、私は社訓の<謙虚>、すこしやわらかく申しあげますと<素直さ> が研修態度の基本であることをはだで感じとりました。<自学自得やむなし>の前に謙虚を加えてください。<謙虚にして自学自得やむなし>をはなむけとします。

 最後に新研修所開設のトップのご判断。職場の研修生に対するバックアップ。専任の講師では手のとどかない点を兼任講師あるいは社内の各分野の指導者、専門の方々、医局の看護婦さんまで心よく研修生の指導にあたっていただきました。研修生とともに厚くお礼を申し上げまして、私のあいさつの言葉といたします。終り。

※2020.4.26記す。保存資料による。

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