研修所第二期生のフォロー教育を終えて
改 訂 版 2023.01.14 改訂

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  自学自得」の新研修制度

 新研修制度(第二期生の詳細スケジュールは下表の通り)では、修業者が上司の指導のもとに、研修教育において習得した第一線のリーダーとしての知識・考え方・行動力を積極的に業務遂行に活用するとともに、一層の向上をはかり、自己啓発に努めることを援助するためにのフォロー教育をおこなっています。その内容は能力開発レポートの作成と課題レポートの作成および発表会を主体としています。

 課題レポート作成については、修業者が所属部署の上司と相談のうえ、課題を設定し、六ヵ月間、これに取り組、レポートを作成します。

 発表は六十一年二月下旬から三月上旬、それぞれの事業場で実施し、工場長をはじめとする上司、アドバイザー、一期・二期生、研修所講師が参加して発表時間二十分、質疑応答十分間、六ヵ月の成果発表と熱心な討議が行われました。

 修業者の書いた「フォロー教育を終えて」の感想文を読み、発表会聴き、関係者のフォロー教育中の感想・意見を聞いていますと、研修中に体得した「自学自得」の精神は生かされ、「一を以て貫く」という言葉が思い出されました。  

 今後とも人間形成・技能向上に、勇をふるって挑戦し、職責をはたすことを期待してやみません。

 皆様に研修生の非常に高い向上心の一端に触れていただきたく、以下に研修生の課題レポート一点と感想文の七点をご紹介致します。研修所長 黒 崎 昭 二

●新研修所スケジュール(第2期生の場合)

研修内容期 間
前期スクーリング(註)59.9.3~59.9.19
第1回事業場巡回指導59.11.27~59.12.12
中間試験(註)60.1.8
第2回事業場巡回指導60.2.25~60.3.15
後期スクーリング60.5.13~60.6.3
課題レポート発表会61.2.24~61.3.13

(註)科目別アドバイザー制度を導入し、通信教育の実効を上げる。


 
フオロー教育についての感想

  修業になったレポート作成

 中条工場 近藤 一男

 「終業ではない。修業である。」所長が、修業式のときに、おっしゃったことばです。大原副社長からも「コメスメント」のご説明があった。

 フォロー教育がなければ、化学の本を開くことも、上司の資料をみることもなかったかもしれません。

 六十年十二月になって、ようやくレポートを書きあげ、アドバイザーにみてもらいました。㊙部分や説明不足などでかなり修正しましたが、どうにか期限にまにあいました。

 たかが、レポート一つに、こんなに苦労するようでは、以前の自分と変わらないのではないかとアドバイザーにきいてみました。

「いいや、以前のおまえには、こんなレポートは書けない。」

 と言われ、一歩でも、前へ進んだのかもしれません。やはり、この教育も、修業だったのです。

  緊張続きの日々を経験

 西条工場 浅野 文治

 研修所修業後の半年間に及ぶフォロー教育を振り返ってみると、各テーマを気にするあまり緊張した日々が続き苦しかったが、今までにない経験と勉強になった。

 課題レポートについては、テーマが大きくまとまりがつかなかったため、最後まで苦しんだ。今は安心感と同時に、今後の責任を感じる。

 一方、能力開発課題は、当初の計画通り進まなかった。時間的なこともあったが、気持ちの余裕がなかったためであると思う。今後は日ごろの自己啓発の意識を持ち、一層の努力が必要であると感じた。

 今回のテーマ実施に当っては、部署の方々に励まされ、又協力していただき非常に感謝している。

 フォロー教育で得た経験を基にして、今後は部署における様々な課題に対して、問題解決を行っていきたい。

  不良品の減少に寄与

 クラフレックス 東京 林 栄 治

 課題レポートのテーマとしては、クラフレックスのダストマンの品質安定の向上について取り組んだ。私自身が販売、加工場管理と一貫して管理しているため、適切であったと思う。

 試行錯誤をくりかえしながらも、品質管理手法にのっとり、製品品質安定の向上に取り組んだ結果、不良品の発生を大幅に減少させることができた。

 品質安定化の取り組みの中で、加工場管理は理屈だけでなく、加工場で仕事する人たちとの信頼関係が重要だということを、あらためて痛感したのは大きな収穫であった。

 また、当然とはいえ、メーカーとして、品質確保に取り組む真剣な姿勢は、加工場にたいして無言の教育となり、初期に比べかなりレベルアップすることができ、有意義であった。

  二つの収穫

 岡山工場 生峰 寿昭

 約六ヵ月のフォロー教育で次の二点について大きな収穫を得たと思う。

 一つは、課題レポートを通して開発テーマの目的、意義の重要性を改めて認識したことである。自分ではわかっているつもりであったが、その認識がいかに中途半端であったかがよくわかった。次のテーマからは今回の経験を生かして、まずその目的、意義を充分に理解し成果をかちとるようにしたい。また課題レポートの作成は大変な苦労であったが、多くの人の援助を得ながらも、これを完成できたことが一つの自信につながったように思われる。

 二つめは、この教育期間中に読書という習慣が身についたことである。今後も自分の基礎的技術力を高める目的で専門書を、そして人間の幅を広げるという目的で偉人伝やその他、良書を読んでいきたいと思う。

  強まった自学自得の精神

 クラレエンジニアリング岡山 大槻 賢司

 フオロー教育が始まった当初、研修所が終了した上になぜフオロー教育などするのか、フオロー教育を行うぐらいなら、研修期間を長くすればいいのにと、反発の念を感じた。

 やがて、自分に課題が与えられた。アドバイザーは出張、出張でいないことが多かった。課題をやり遂げるため、いろいろな資料を調べたり、多くの人に尋ねたりして苦労した。この苦労が研修所で教わったやる気と自学自得の精神をより一層強めた。

 もし、強制的なフオロー教育がなかったならば、研修所が終わりホッとした気持ちになり、徐々に怠け癖が出始めていただろう。そして研修したことが無意味になっていただろうと思う。

 六ヵ月のフオロー教育は、自分に活を入れ、これからどのような考え方、行動を取るべきか、教えてくれた気がする。この気持ちを大事に、能力開発に精進しようと思う。

  自発的勉強の契機に

 中央研究所 村上 修一

 フオロー教育では、自分の勉強不足を強く感じるとともに、今後は自発的に勉強に取り組み、そして、主体性を確立することが大切であると痛感した。

 私の課題は、報告書の作成、英語文献の翻訳、専門書の精読などであった。日ごろから業務上必要と思っていたものばかりであったが、多忙の理由をつけては怠っていた。しかし、この教育で思わぬ勉強をさせてもらった。報告書の作成は、終始一貫した業務遂行能力を身につける絶好の勉強であった。私は今まで、自分の責任範囲の仕事だけやっていたところがあり、主体性に欠けていたことが分かった。また、英語文献の翻訳や専門書を読むのは与えられたものにかぎっていた。これでは自発的でなく向上が望めない。

 フオロー教育期間をこれからの出発点として、今後は毎日、少しずつでもこの課題に積極的にチャレンジしていこうと思っている。

  計画実行の難しさを痛感

 大阪本社 三村 俊二

 フオロー教育期間を顧ると、計画通り実行することの難しさを痛感させられた。

 外的要因として、職務分掌の変更があり、日常の業務が忙しくなったこと、部内全体の仕事が忙しくなり、他のメンバーとの交流がスムーズにいかなくなったことがあげられる。

 内的要因として、教育期間が六ヵ月もあるという安易な気持ちで取り組んだこと、仕事の忙しさを理由に今日すべきことを「まあいいや」とずるずる延ばす心のゆるみがあったことがあげられる。このことが一番の反省点であると思っている。

 フオロー教育は自分自身のためのものであると同時に、仕事と両立させなければならぬと考えていた。しかし、ふりかえると反省すべきことばかりである。

 今後、無理のない計画を立て、かならず実行するよう努力したい。


 
ポバール荷造り包装の合理化

 岡山樹脂部生産一課 小尻 祐美

 強ければ安心、弱くすれば安くなる。両者の接点を求めたのが今回のテーマである。

 研修所二期に学び、そのフオローアップ教育の課題テーマとして、現行のポバール荷造り包装材料を全面的に見直し、現在の物流形態に適応できる、コストパフオマンスの最も良い材料を追求することに取り組んだ。

 ポバールはプラスチックでありながら水に溶け、粘着性、接着性、乳化性に優れた高分子物質である。この特質を生かして急激に多方面の用途が拡がり、現在ではビニロン原料以外の一般工業用途に、全生産量の約六〇パーセントが使われ、我が社は今や、日本では五〇パーセント、世界で三〇パーセントのシェアを占める、世界のトップメーカーである。

 ポバールの包装形態においても、我が社の包装形態、包装資材が業界の一般形態、あるいは業界基準として、同業他社が追随している状況にある。

 我々は中期経営計画のさなかにあり、景気等社会環境の変化に左右されない、常に高い収益力を目指す企業体質とするため、会社をあげて各セクションで取り組んでいる。

 我々が着目したのは、資材費である。資材費である。「資材購買管理は、企業利益の残された源泉」といわれるように、資材購買の改善により資材費を引き下げれば、それだけ原価が下がり、利益が増すことは言うまでもない。

 その包装袋は、ポバールの品質、用途、出荷先などにより多種多様である。大別すると内地向けと輸出向けとに分かれ、一般包装、特殊銘柄用となる。社内用では原料専用袋がある。いずれもクラフト紙製で、二〇キログラムから七〇〇キログラム詰めである。

 ポバール製品の物流形態は、近年輸送コストの低減、営業倉庫の合理化などにより、パレット付き輸送が増加している。輸出はバラ積みからコンテナ船による出荷が大勢を占め、製品が最終ユーザーに着くまでの、実際のハンドリング作業回数は、大幅に減少している。このような時代の流れの中にあって、我が社の紙袋は、落下強度テストにおいて、高さ二メートル落下させ、破れない強度を保ってきた。JIS規格では高さ一・二メートルと規定され、一般的には一〇回の落下で破袋なしを合格としている。近年の物流形態及び落下強度、この両者の状況からみると、我が社の袋はりっぱすぎる。

 年間四千万円の合理化に成功

 このような背景から、VA(価格分析)的考察のもと、包装袋を全面的に見直し、関連部門協議の結果、新材質の採用及び設備改善などにより、年間四千万円の合理化が期待できる。その内容は次の通り。

 一、輸出用クラフト紙の材質変更。二、内地袋の材質変更とクラフト紙を一枚へらすこと。三、原料専用袋にクラフト特殊紙を使用。四、微粉用袋の包装形態変更と充填作業場及び設備の改善。五、包装袋サイズの縮小。六、輸出袋の社内包装基準を見直し、封かん方式の改善。七、備蓄用フレキシブルコンテバックの材質変更。

 また今回、包装袋の全面的な変更を機に、ポバールの物性的要因別に、内地袋印刷色を系統的に設定した。

 簡単に紙袋というが、包装袋はクラレの顔である。いくら内容が優れていても、お客がまず一番に見られるのは、その入れ物である。汚い破れたような袋では、企業イメージダウンなど、決して良い結果とはならない。今回の合理化は、この点で最も気をつかい、テストにテストを重ね、苦労した点でもある。

 大企業大組織においては、一般に業務の専門化、狭小化の傾向にある。自己の業務及び直接関連する部分には精通しても、他の領域については、ほとんど知られないという状況にある。しかし今回の合理化推進に当っては、物流、機材、販売、生産、及び中条工場、各セクションの者が部門を越え、業務の横の流れに目を向け、全員が一丸となって取り組んだ結果である。改めてお礼申しあげます。

 研修所修業式に、大原副社長より修業に当り「コメンスメント」というお言葉をいただいた。「研修生は修業式を迎え、今日終わったのではなく、今、新たに研修生としての取り組みが始まったのだ」というお言葉だった。

 今回の合理化においても、これで終わったのでなく、日進月歩の時代に、ポバール包装に関する新たな取り組みが始まったと考える。

 研修所で学んだ、今、自分は何をしなければならないのか。「今、ここ、我」。この言葉を指針として、今後も研修生の精神でありたい。

 「クラレタイムス」 1986年 4月号掲載

★2023.01.16日記す。「クラレタイムス」掲載から約57年も経過している。

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