税所 弘『「朝型人間1」の成功哲学』(三笠書房)

改 訂 版 2022.12.26 改訂

★「朝型人間」の成功哲学 決定的なハンデも心がけしだいで大利点に変わる 足と健康:第二の心臓 なぜ早起きは脳内細胞の活性につながるのか "体内時計"に忠実なのが早起きだ!
人間の「元気の素」は午前七時頃に頂点に達する 午前零時から三時頃まで「元気の素」は三分の一に下がる 「誓ひ」の実践で"心の姿勢"を矯正する 人生の目的達成への進行表となる「誓ひノート」


決定的なハンデも心がけしだい(丶丶丶丶丶丶)で大利点に変わる

 ビジネスマンにせよ学生にせよ、「無駄に時間を浪費していないか」ということに関して思い起していただきたのは、竹内均教授の体験談である。 P.176~P.179

※プロフィール:竹内 均(たけうち ひとし)(1920~2004年)地球物理学者。東京大学吊誉教授、理学博士、科学啓蒙家。科学雑誌『Newton』初代編集長。代々木ゼミナール札幌校元校長。

 竹内教授の話によれば、早起きの習慣と訓練一つで、たった十五分を一単位としてまとまった仕事ができるというのである。うっかりすれば見落としてしまいがちな「小さな時間」でも、それを積み重ねれば、竹内教授のように三百冊の著作として集成されるのである。

 こうした時間の使い方として、私は通勤電車の時間をもっと有効利用するようにお勧めしたい。もちろん、これも早起き生活が前提であることはいうまでもない。

 実は、竹内教授もこの早朝の通勤電車の活用に早くから注目し、また実際に活かしてきているのである。

 竹内教授は東大で教鞭をとっていた当時から、七時半には大学に到着するという早朝出勤の実践者だったが、こういっている。

「私が早く出勤するという理由の一つは、早朝の電車はガラ空きで、いかに東京のラッシュがすごいといっても、さすがに七時前の電車ならば確実に座れるからです。それで急ぎの原稿を書いたり本を読んだりするのに最高の時間と書斎なんです」

※関連:私しの移動自習室時間。早朝5時10分での通学。2時間の勉強時間の効果は覿面であった。

 ここにも早起き人間がいかに人生を積極的に考えるか、またそれによっていかに人生でトクをするかが暗示されていると思う。

 最近の通勤通学の時間が長くなっていることは周知の通りである。一時間半から二時間といった長時間さえめずらしくない時代だ。たしかに一面からいえば、それは住宅政策の不不備ということもあろう。

「長時間通勤で体がヘトヘトになってしまって、会社につくころは仕事の意欲もあったもんじゃない」

  という嘆きを聞く。

 しかしそう文句をいって嘆いていたところで、トクにはならないのである。それよりも、いつもより三十分、一時間早く家を出て、その長時間通勤なり通学なりを逆に利用するという積極的発想を生かしたほうが、よほど利口である。

 たとえば竹内教授などは、むしろ、

「通勤時間の長い人がうらやましい」

 というくらいなのである。

 竹内教授の場合、元来書斎といったしゃちこばっものは持たなかった。ミカン箱を机の代わりに素晴らしい研究をしてきたとい不創造人間であるである。

 そしてその当時から、早朝の通勤電車が書斎代わりだったという。たとえ座れなくても客の乗車率はたいしたものではない。立って吊り革につかまっていても、隣りの人とぎゅう押し合うような混雑はまずない。本を読んで勉強するにはなんの支障もないのである。それで早朝の通勤電車内がれっきとした勉強タイムであり、また立派な書斎だったのである。

 東大の現役教授時代は、目黒の柿の木坂の自宅から研究室のある根津まで電車に乗った。その時間がだいたい四十分から五十分だった。その往復の通勤時間で文庫本が一冊読めてしまった。

 文庫本だけではない。たとえば日本語版「ニューズウィーク」などもこの時間に読むにはちょうどよかった。この雑誌は見開き程度で一つの記事がまとめられている。思考の切り換えがしやすく読みやすい。そのうえ国際的な視野でものを見たり考えたりする日常的習慣がつけやすいというメリットもあったそうだ。こうした勉強が何年となく積み重ねられて、それが竹内氏の創造性豊かな仕事に大いに寄与しているのである。

 むしろ、通勤先が新宿になったため、通勤時間が三十分以内と短くなり、思うように"車内勉強"がなくなって悩みのタネになっているというのだ。

 このように、通勤電車の長い時間も早起き生活をするだけでラッシュに遭うこともなく、十分活用できるのである。

2019.11.28


脚と健康

▼税所 弘『「朝型人間1」の成功哲学』(三笠書房)を読んでいると P.78

 人は年を取るにしたがい自然に早起きになる。脳研究科の専門家によれば、これは肉体的にも精神的にも衰えてきたことから自然に働く、体の自己防衛作用だという。

 朝早く起きることによって脳が刺激され、本来人間にそなわっている自然治癒力をより活性化させるというわけである。すなわち、生命のリズムは朝早く起きることでその活動を活発化させるのである。とすれば、年を取っていようがいまいが、この原理を利用しない手はない。

 不思議なことに、早起きの生活をずっと続けていると、こだわりやわだかまり、考えすぎや憂いといったことがなくなる。

 私(著者)が敬愛する中村天風という人物は、朝起きると必ず、ニッコリ笑って「ありがとうございます」といったという。

 早起きは、目が覚めた瞬間に、無事に生きていることはありがたいという感謝の気持ちを育ててくれる。こうした気持ちを持って生きると、不平や不満はなくなるのである。
 そうなれば、おのずと自分の人生に意義を見出すことができ、希望も湧いて、自然に運もめぐってくる。日々、ついついだらしなく過ごしてしまうといった悪い癖も当然なくなる。

▼研究者でも夜型であり、また朝型である。人さまざまのようである。この本の著者は後者であるべきだと説明している。夜型を朝型に変更するには、習慣を変更するに等しい努力がひつようだろう。体験して、体で覚えることが肝要であろう。

▼夏は朝が早く開けるので、この時期に早起きの癖をつけるのは絶好の機会だと思う。

2011.07.08


 第二の心臓ーー「脚は朝鍛えるべし」 P.198~200より 

 日本は世界でトップレベルの長寿国になった。しかし、平均的な寿命は伸びたからといって安心はしていられない。長生きするものの、寝たきりであったり痴呆症であったりという障害がつきまとえば、長生きの楽しみも享受できない。長寿の意味も半減というところである。

 実際、六十五歳以上の老人のうち、文字通り健康を保っている人はわずか二〇パーセントで、あとの八〇パーセントはなんらかの心身の異常を持っているデーターもあるくらいだ。

 健康で勉強にもビジネスにもバリバリ邁進できて、しかも健やかで長寿をまっとうするための条件はいろいろある。

 内的な因子としてはめったに争いごとをしない。思いやりがあって欲望も強くないといった要因、また外的因子としては、規則的な生活リズムがなんといっても第一である。そして食生活も大きな要因になる。食べ過ぎ、とくに肉食をひかえて魚介類や海藻類、野菜類をしっかり食べるといったことが大切である。

 たとえば、京都大学霊長類研究所所長の久保田競博士が、百歳以上の健康なお年寄りについて調べたところ、その健康長寿のコツも私たちの考え方と一致しているようである。

 久保田博士によると、百歳以上のお年寄りの生活の基本は、やはり早寝早起きを実行して、太陽を中心にした生活リズムにマッチさせていることが挙げられる。

 そして気持ちの持ち方としては、クヨクヨしないこと。つまり「ネクラ」にならないことである。明るく、またどちらかといえば外交的であることが大切だと説いている。

 そして、食事は腹八分目に抑え、お酒は少々たしなみタバコはひかえる。

 円満な家庭に恵まれ、また年を取っても生活のうえでの自分の役割を持ち、趣味や生きがいを持って頭を使うことも大切である。これが痴呆症の重要な予防にもなるといわれているからだ。

 早起きとともに実行する早朝散歩で、さらに健康な心身を保障することができる。現代人の体のウイーク・ポイントは、なんといっても脚である。いうまでもなく、クルマに頼る日常生活が脚を弱らせているのである。よく都会の人はクルマ生活で脚が弱っているといわれるが、むしろ実際には都市以外の農村に住む人にそうした傾向が強い。都会に住む人は通勤などでそれなりに脚を使う機会はあるが、農村の人々はそれも少なく、しかも公共交通が身近に少ないだけに、よけいクルマに頼るからだ。

 しかし、都会に住むビジネスマンにしても「歩き不足」は明らかだ。

 脚は使わないと「廃用性萎縮」といって、筋肉が極端に衰えてくる。この「廃用性萎縮」を起こさないためには、一日少なくとも一万歩は歩く必要がある。距離にして約六キロ、時間にしておよそ一時間半の歩行でもある。

参考:廃用症候群

 それがふつうの人は五千歩か六千。管理職のビジネスマンなどでは二千歩から三千止まりだ。健康で長生きするために必要な量の三分の一というのが現実なのである。

 歩いて脚を使うということは、ただ単に脚の筋肉の衰えを防ぐというだけではなく、同時に腕や胴体など体全体の筋肉の衰えを防ぐ。さらに歩くことによって脈拍や呼吸も早くなる。つまり歩くことによって心臓や肺の機能も高めていることになる。

 それで杉靖三郎博士は「脚は第二の心臓」といっているくらいである。早起きによる早朝散歩はいうまでもなく、こうした心身強化に大いに役立つ。まさに、いま確実に近づきつつある高齢化社会へのパスポートなのだ。

私見:上の本は1,993年9月、約8年前に発行されている。高齢者の健康保持については多くの方々がいろんな角度から提言されています。
私は確かに脚の衰えを自覚させらている。転倒しない程度までは脚の筋力は保持したいものです。知人の一人はご子息に「お父さんは毎日歩きなさい!」と言われているが、なかなか実行できないでいるといわれていました。継続できるかどうかが決め手のようだ。


なぜ早起きは脳内細胞の活性につながるのか

 早起きして、さらに散歩をするなど体を動かすと、頭の働きが断然よくなることは、早寝早起きを実践している方々の多くが、学者やトップ・ビジネスマンとして素晴らしい働きをし、成功しているという客観的事実からもなっとくしていただけるのではないかと思う。

 これは、単に経験的事実というだけではなく、大脳生理学的な観点からも説明することができる。

 なにしろ学校にせよ会社にせよ、その活動はやはり昼間ということになっている。それなのに夜ふかしをしたり、朝寝坊をしたりと、リズムの狂った人間が学校や会社で適応しようとしても無理をきたすのは当然といえよう。そして、そうした無理がうつ病や自律神経失調症、あるいはストレスの原因になってくる。その背後には、昼夜の本来のリズムを逸脱してしまった現代人の悲劇的なライフ・スタイルという事実が存在するのである。 

 学校や会社の活動時間帯が昼間を中心にしているのは、人間の体調と密接につながっているのである。

 太陽の運行を中心としたこの生活のリズムをサーカディアン・リズム(circadianrythm:体内時計)という。大昔は時計などといった文明の利器がなかった。もちろん照明もなかった。それで人間は、太陽の運行にしたがって行動するようになった。太陽が昇る時刻に起き出して活動をはじめ、そして太陽が沈めば眠るという行動パターンが、しだいに作られてきたのだ。つまり、早寝早起きの生活のパターンである。

 このリズムは太陽の運行が中心であるから、おのずから朝から翌日の朝(あるいは夜から翌日の夜)までの二十四時間周期となっているのである。この間に睡眠と覚醒が早寝早起きという形でセットされているのである。

 こうして、人間は太陽を中心に生理的メカニズムを調整したのだが、これは人間だけに限られているわけではない。椊物をはじめ、地球上のあらゆる自然体系が、このサーカディアン・リズムを持っているのである。たとえば、ねむの木が夜になれば葉を閉じるのも、その一つである。

 この周期は二十四時間というサイクルだけではない。春になれば木々がいっせいに芽を出す、というような四季のサイクルまで、ちゃんと持っているのだ。

 こうした長いサイクルのリズムを、人間などの動物に置き換えてみれば、ホルモンの分泌として現れていることがわかる。春には性ホルモンが活発になり、ネコが大騒ぎすることも、その一つである。人間もとりわけ活動的になり、じっくりとものを考えるには不適当な季節ということにもなる。大脳生理学者が、

「沈思黙考するには秋から冬が適している」

 というのもこういった裏付けがあるからだ。

2019.11.29


"体内時計"に忠実なのが早起きだ!

 人間はもともと太陽を中心とした大自然の活動のリズムとともに生活するようにできている、ということがわかるのである。

 人間にとっての生活リズムというものは、個々人が勝手きままに設定できる性質のものではないということである。

「オレは夜のほうが活動しやすいから、オレのリズムの中心はお月様だ」

 といっても、それはしょせん本来あるべき健全な生活リズムではないということになるのだ。

 このことは、人間の活動力を中心とした生理的メカニズムを観察すれば、いっそうはっきりする。

 人間の体の働きはすべて自律神経で調節されている。頭の働きをはじめとして内臓の活動は人間の意志とはかかはりなく、自動的に働く自律神経で支配されている。自律神経には心身の活動を活発にさせる交感神経と、逆に活動を鎮静させる副交感神経の二つがある。太陽の昇る頃に交感神経が働き出し、そして夜になると副交感神経が働くというメカニズムを持っているのだ。この自律神経の働きにともなって各種の重要なホルモンも分泌されて、心身の活動力が調整されるのだ。

 大自然に接したとき、誰もがその超越的なパワーに圧倒されるものだ。しかし、実は人間自身も本来その大自然のパワーを身につけているのである。そして早寝早起きという大自然の活動リズムにマッチした生活リズムを身につければ、誰もがその超越的パワーを発揮することができるのである。

2019.11.30


人間の「元気の素」は午前七時頃に頂点に達する

 生活リズムというものは、人間がそれぞれ勝手な「自分の気持」で決められてしまえる筋合いのものではない。大自然が持つているルールなのだ。そのルールが早寝早起きという生活スタイルである。人間の生活は食物を摂取し、心身の活動をし、そして睡眠を取るというのが基本であるが、その基本のスタートが早寝早起きだといえよう。寝たいときに寝て、起きたいときに起きるという「気分しだい」の生活では、大自然のルールからはずれていることになる。そうすれば、心身の機能に異常をきたすのは当然である。

 そうしたリズム喪失の生活が、現代人を襲うストレス病、うつ病などの引き金になるのである。裏からいえば、早寝早起きがストレス病やうつ病などの治療にもきわめて有効なのである。私がそうした病気の治療として早寝早起きを提唱し、実践しているのもそのためにほかならない。

 では、なぜ早寝早起きが素晴らしいパワー発揮に結びつくのだろうか。

 生理学的にいえば、人間を「元気づける」ホルモンとの関係がある。二十四時間の生活リズムを安定させているのは、副腎の髄質から分泌されるアドレナリン(adrenaline)と、副腎皮質から分泌されるコルチコイド(glucocorticoid)というホルモンである。とくにアドレナリンは人間の「元気の素」とでもいうべきホルモンである。困難な問題に立ち向かうとき、手ごわい相手に立ち向かうときは、このホルモンが分泌4される。それによって人間は思いもかけない能力を発揮することができるのである。

 この二つのホルモンは、太陽の昇る頃から少しずつ分泌され、午前七時頃に頂点に達するといわれる。つまり困難に立ち向かうといったときとは別に、体の中ではその頃にはおのずから生命力がみなぎっているのである。だから、その時間の二時間前に起きていれば、十分な心身のウォーミング・アップもできあがり、頭も体も持っている能力を十分に発揮する準備は整っているということになる。

2019.11.30


午前零時から三時頃まで「元気の素」は三分の一に下がる

 この二つのホルモンは、午前零時頃から三時頃までは午前七時頃のピーク時と比べてその分泌量は三分の一くらいである。心身を活性化させるホルモンが少ないということは、それだけ穏やかで深い睡眠が得られるということでもある。

 こうしたことから逆算すると、十時頃にはベッドに入ることが理想ということになる。人間の睡眠時間はおよそ七~八時間だ。したがって五時から六時頃には起きる。これが理想的な睡眠の取り方なのだ。そうすれば午前零時から三時頃にかけての理想的睡眠時間帯にぐっすりと質のいい睡眠を取ることができる。杉靖三郎博士はこの三時間を「睡眠のゴールデンアワー」と呼んでいる。

 私が「寝たいときに寝て起きたいときに起きる」という勝手な気分による生活リズムは「諸悪の根源」というのも、こうした理由があるかからにほかならない。

 もう一つ、早寝早起きが心身にとって得である理由を挙げておこう。体の外部にも早寝早起きが絶対に有利である理由が存在するのである。

 それは気温、湿度、そして空気イオンの陽陰という三つの外的環境である。

 そこに早朝散歩という運動が加わると、さらに脳細胞が活性化されてくる。

 これも、運動することによってその刺激が大脳に伝えられるからである、という大脳生理学的な説明ができる。じっとして沈思黙考することも大脳を鍛えるには大切なことであり、むしろ前提でもあろう。しかし、じっとしているだけでは不十分なのだ。散歩など体を動かすことによって大脳の緊張がほぐれ、それをきっかけとして素晴らしいひらめきを得るということが少なくないのである。

2019.12.02


「誓ひ」の実践で"心の姿勢"を矯正する

「早起き生活と早朝散歩を実践しよう」

 と提唱し、そして医学指導もしている私自身、率直にいえば、はじめから早起き生活がスムーズに実践できたわけではない。

 学生時代などは生活リズムも実に不規則だった。それだけに早起き生活に切り換えるには、それなりにたいへんな苦労をともなったのである。

 生活リズムの問題だけではない。「性格リズム」にも問題があったのだ。生活リズムに問題があるということは、私の理論からすれば当然「性格リズム」にも問題があるのだ。

 実際、その頃は私自身、自律神経失調症に陥っていたのである。事業をやって倒産した前後のことだ。共同事業者であった友人たちが、倒産した後姿をくらましてしまったということが直接の原因だったが、私の精神はその友人たちに対する恨みつらみでいっぱいだった。それが自律神経失調症になった理由である。

 しかし、だんだんそういう心の持ち方への反省が生まれてきた。そして生活と性格を立て直そうと早起き生活を始める決心をした。だがはじめのうちは、思うようには実践できなかったのである。

 それでかつて父が行っていた「誓(ちか)ひ」というものを、まず実践し始めたのである。

「誓ひ」というのは、つまり「誓い」のことだが、これはもともと『古事記』や『日本書紀』などに出てくる言葉だ。日本の古代人の神意識の表現であり、

「これこれのことを天地神明に誓って実行します」

 という「決意表明」である。それも神に誓うのである。

「神に誓う」となると、不思議に決意も固くなるものだ。私は、

「明日は絶対に五時に起きます。神に誓って必ず起きます」

 と寝る前に心に誓うようにしたのである。それで少しずつ実践に移すことができたのだ。

 そうして早起きを実践しているうちに、自分の気持が少しずつ変化していくのがわかった。友人たちへの恨みつらみの気持がしだいに薄らぎ、

「人の責任にしてはいけないのだ」

 という気持になっていったのである。

 他人に対する恨みつらみというものは、結局自分の欲望の深さにこだわっているからにすぎないのだ。ということが理解できてきたのである。

 強い欲望、自分の尺度でものごとを推し測る自己中心主義が、自律神経失調症にやうつ病の原因になるのである。

 ところが「誓ひ」を通して早起き生活を実践しているうちに、そうした私の精神の質が変わってきたのである。こういうことは、それこそ早起きを実践してみないと理解できないことである。

 以来、私は人を憎んだり恨んだりしないようになった。そうなると自然に自律神経失調症も治まってしまった。

 そうして恨みつらみに代って、私の心の中心を占めるようになったのは「感謝」という姿勢である。こうなると実に気持ちが楽になるのである。

 しかも、そうした気持で仕事をしていると、その後は多くの優れた同調者や賛同者を得ることができるようになった。

 こうした優秀な同調者を得るということは、私に対する世間の信頼感にもつながり、それがおのずから私の仕事にも大きな発展を促したことはいうまでもない。

 つまり、私にとっては生活の変革を可能にした早起き生活は「誓ひ」に導かれたのである。そして私は現在でも「誓ひ」を実践している。

※関連:五省の項目。毎日の自習時間終了時に反省した項目。日常行動について上級生徒の口頭注意にもしばしば使われた。例えば「貴様の態度は気力に欠けている、注意しろ!」、「貴様たち3号は言行に悖ることはなかったか」と。今でも、当時の雰囲気を覚えていて、精確に唱えることができる。

※関連:朝の誓、実践倫理、朝起会の皆さんは毎朝5時に集合して、開会時に唱和している。元気な声をだしての唱和はその日の活力になっていると思われる。

2019.11.28


人生の目的達成への進行表となる「誓ひノート」

「誓ひ」を実践するというのは「誓ひノート」をつくるということである。使いやすそうな手帳でいいから、「誓ひ用」のノートを用意する。そこに自分の目的や決意、生活や性格についての反省点などを、毎朝の散歩で折り返し点に着いたときなどに書き込むのである。

 目的とか決意というのは、あらためて考えてみると案外自分でもわかっちないものだ。

 たとえば、自分の性格を変えたいなら、「人のことを恨まない」ということ一つでもいいから、自分が気づいたことを忘れないうちにまめにメモすることだ。

 なるべく具体的であること。そして手近で実現可能なことを少しずつ書きとめることだ。十年先のことを書いてももちろんいいが、そのために今日何をすべきかといったように、小さくてもいいから具体的な一歩を書きとめるのがコツである。

 大きな目的も小さな一歩から始まることを忘れないようにしたい。

 こうした「誓ひノート」を毎朝の早朝散歩に携えて書き込み、そして読む。読むのは散歩のときだけではなく、一日に少なくとも三回は読んで、その内容をしっかり頭に刷り込むという作業をした。

「誓ひノート」は自己啓蒙のためのノートである。自分が変わるための手段である。

 しかし、このノートは単に自分に対する誓いだけではなく、同時に神に対する誓いであることを忘れないようにしたい。それを忘れなければ「誓ひノート」に導かれる早起き生活から、必ず大自然のパワーがくみ取れるはずである。

2019.11.28

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